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SSをネタに何か書いてみようシリーズ1
イズルードの飛行船

 イズルードから飛行船が出るようになってしばらくが経った。
 最初は物珍しさで利用していた人間も多かったらしいが、今ではすっかりミッドガルドを行き来する重要な足となっている。
 私も何度か利用をしたのだが、新しい相棒と乗り込んだのは初めてだ。
「ホムンクルスですね」
 飛行船へ案内する女性(これはグランドアテンダントとでも言うべきか)がにこやかな笑みを向けてきた。
 お愛想で言っている様子でもなかったが、ホムンクルス自体は見慣れているようにも見えた。そうだ、以前に飛行船に乗り込んだのはリヒタルゼンへ向かう旅程の初めだった。
 私はてらい無く「うちのが一番可愛らしいと思いませんか?」などと冗談半分の返事を返す。親馬鹿の自覚はある。

 飛行船は案外空いていた。
 割合早い時間帯の為だろう。ミッドガルドの住人は夜型が多い。
 ホムンクルスの東風を連れて、私は船の縁へと出た。空が一番よく見える場所だ。
 吹き抜ける風の音、上空では飛行船のプロペラの機械音。
 案の定、足元から広がる景色に圧倒される。
 澄んだ青空にゆったりと白い雲が流れていく様は、喩える物が思いつかない。雄大という言葉も陳腐に思える。
 雲の切れ目に緑の大地が見える。アルデバランはどこだろう?
 傍らの東風も目を丸くして空を見ている。
「……世界は、広いんだよ」
 独り言を、呟いてみた。
 東風は聞いていたのか、こちらを見て首を傾げる。
 私はなんでもない、とでも言うように首を横にして、また空へ目をやった。
 どんどん新しい大陸が発見されていく。情報だけで行ったことがない国の名前が増えていく。情報にすらなっていない国もまた沢山あるのだろう。
 その中で私が動ける場所、生活する場所は限られ、私が世界だと認識している世界と本来の世界との間のずれも広がっていくのだろう。
 世界の広さを決めるのは、それを認識する側なのだ。それならば、広い世界に住みたいではないか。

 まもなくジュノーへ到着をすると、アナウンスが流れた。
 雲が途切れ、大地が近くなっていく。
 私は荷物を持ち直し、東風を促して歩き出した。
 この仕入れが終わったら、今度はアユタヤにでも行ってみようか。